コントラストを意識する

公開日:2021.05.30

コントラストの意味は「対比」

コントラストの意味は「対比」

わざわざ説明する必要もないほど、日本語としても溶け込んでいる「コントラスト」という言葉。天使と悪魔、勇者と魔王など、真逆に位置するものを並べるとどちらも魅力的に見えるものです。これは別のメモ、知っておきたい「色」のことで少し触れた「補色」と同じ原理ですが、日常会話においては両者の「差」や「違い」という意味で使われる言葉でしょう。

色におけるコントラストの基本は「明るさと暗さ」。明るい色の背景に暗い色の文字、もしくはその逆は、とても読みやすいですよね。背景と文字の色が似た者同士の場合、これはしっかり読ませるつもりのない「飾り」の文字なのかなという印象を受けてしまいます。背景の一部として大きく入れる文字など、敢えてそういう表現をするわけではないのなら、あまり好まれない組み合わせです。

かつて、背景と文字の色を同じにした「あぶり出し」を使用したウェブページがありましたが、今でもそういった手法は使われているのでしょうか。話が逸れてしまいました。戻します。

デザインやイラストにおけるコントラスト

デザインやイラストにおけるコントラスト

デザインやイラストは敢えて同系色でまとめる美しさもあるので、必ずしもコントラストがはっきりしているものが素晴らしいというわけではありません。しかし、何かを強調したいときには欠かせない要素です。

コントラストが重要な身近なデザインとして真っ先に挙げたいのは、道路標識でしょうか。国によって違いはあると思いますが、日本では赤と白、青と白、黄色と黒など、とても視認性が良い組み合わせが使用されています。これが赤とピンク、青と水色、黄色とオレンジというような比較的似ている色の組み合わせだったらどうでしょうか。目の前で見たらキレイなデザインのようにも思えても、何メートルも離れたところで車を運転している人の目に留まるかというと、疑問を感じずにはいられませんね。

私たちの身の回りにあり、デザインされているという認識がないくらい日常的なものほど、コントラストが強く意識されているように感じます。おしゃれにすることだけがデザインなのではなく、分かりやすく快適なものにすることもデザインなのです。コントラストの話からは少し逸れてしまいますが、老若男女問わず取扱説明書の長い文章を読まなくても使える生活家電は、特別におしゃれではなくても良いデザインであると言えます。

写真や映像におけるコントラスト

画像や映像におけるコントラスト

Photoshopなど、画像処理を行うアプリケーションには、コントラストの調整をする機能があります。Photoshopでは「明るさ・コントラスト」として用意されており、明るさは画像全体に明るくもしくは暗くするのに対し、コントラストは明るい部分と暗い部分の差を広めたり縮める役割です。

過去に私が撮影した写真を使って、この機能で極端な例を作ってみました。コントラストを上げる・下げる数値はどちらも同じです。コントラストを高めると強い光が当たっているような感じで色が飛んでしまい、コントラストを低めると薄暗い場所のような印象になります(分かりやすい例を作るため、「従来方式を使用」で加工)。

写真や映像の補正は実物と同じに見えるようにすることが最良である場合が多いのではないかと思います。たとえば、料理の本にこんなにコントラストが強調された写真が載っていたら、なんとなく違和感があるはずです。薄い色は白く飛んでしまうので、質感が失われ、美味しそうには見えません。商品の画像として掲載されていたら、実物と違いすぎてクレームが来てしまいそうです。

もちろん、芸術的な観点からコントラストを高めたり低めたりした写真が世に出ていることもあるでしょう。加工することで非日常感が生まれ、まるで異世界の風景のように見えたりするものです。ファンタジーとして歓迎されるのか、詐欺と言われてしまうのか。この時代、どのような言葉を添えて世に出すのかも大切ですね。

日常にも活かしてみよう

日常にも活かしてみよう

料理には彩りが大切と言われますが、全部茶色の煮物だって美味しいことに変わりはありません。それでも、盛り付けに黒い食器を使うか白い食器を使うかで印象が変わってみえるものです。ささやかなことですが、コントラストを意識してみると毎日が少し豊かになります。

全身真っ黒のコーディネートがおしゃれに見えるかそうでないかの違いは、何でしょうか。決して、個人の容姿やスタイルによる違いではないはずです。アイテムによって素材を変えることで、光の加減で全く同じ色には見えなくなる、というのも印象が変わるひとつの理由かと思います。適度に肌を見せて服と肌でコントラストを作るのもまた、そうでしょう。全身真っ黒という印象を受けるゴシックファッションが美しく見えるのは、特徴的な形はもちろんですが、細やかな装飾や素材による陰影が大きな要因なのだと思います。

お部屋のインテリアは、赤いカーテン、黄色のラグ、青い家具……みたいなことをしなければ、散らかった印象になることはないはずです。もちろん、これらの色のアイテムを置いても上手くまとまる場合もありますし、同じ色で統一してもイマイチだと感じる場合もありますが、無難なものにするのは意外と簡単だったりします。ひとつだけはっきり言えるのは、お部屋の中に物がぎっしりと詰め込まれている状態は良くないということ。服と肌でコントラストを作るという考え方と同じで、床(もしくはカーペットやラグ)と壁は適度に見えている状態だと広さを感じやすくもなり、快適です。

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さかがわまな[Mana SAKAGAWA]

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