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2017/07/17

今も昔も、あまり外に出ないのが私という人間だ。必要に迫られて仕方なく靴を履き、渋々と玄関のドアを開く。夏の日中に外に出たら死んでしまうんじゃないかと思うくらい、強い日差しが苦手だからだ。私はゾンビか何かなのか。
電車なんか走っていないし、バスは1時間に1本みたいな世界。そんなんだから親の送迎で高校に通っていたものの、たまたまその日は自力で家に帰らなければならなかった。バスを降りて20分くらい歩いていたらすっかりずぶ濡れ。制服は重たくなり、ローファーの中には雨が入り込んで、家に近づくにつれて順調に素早さが下がっていた。
そんなとき、「すてねこ」と書かれたダンボールとそこから出てしまったと思われる小さな黒猫が目に映った。子猫は声が出ないのか、息を吐くような鳴き声で私を呼ぶ。気がつかないフリをしても、のんびり歩く私についてくる。似た者同士なのかもしれない。名前は“くるり”、愛称は“くる”。家までついてきてしまった彼女は、家族になった。
風の強いある秋の日、彼女は突然いなくなってしまった。黒い肉球の猫はやんちゃだと父親が言っていたけれど、確かに彼女は家の中でも外でもくるくると動き回っていた。狭い家の中に飽きてしまって、旅に出たのかもしれない。田舎の空の下は呆れ返るほど広いから、彼女は退屈することなく一生を過ごせたことだろう。